『減量と血糖コントロール』
食事のコントロールの役割
血圧や血糖コントロールに関して言えば運動療法単独よりも食事療法単独あるいは食事と運動の併用でさらに大きな体重減少を得た場合の方が、改善の程度はより大きいことがわかっています。
また、中性脂肪(トリグリセリド)、HDLコレステロール、インスリン感受性の改善は体重減少率に関連しており、減量手段による差はないとのことですが、やはり運動と食事の併用が望ましいでしょう。
運動が大切なことはこれまでもお話してきておりますので、ここでは食事に焦点を当ててみたいと思います。
まず、最近の食事療法のトレンドであるアトキンスダイエットに代表されるような極端な糖質(炭水化物)の制限です。短期間で見れば確かに減量効果はありますが、糖質でなければならない理由はないようです。つまり、結果として総エネルギーが減少したので(エネルギー収支がマイナスになったので)、減量できるという当然の話です。さらに主食の長期間の制限は実施が困難といえます。
次に、興味深い成績として短期間に同じエネルギー量で糖質と脂肪の比率を変えた時の血清脂質に及ぼす影響の結果を見てみると、高糖質低脂肪の食事で中性脂肪(トリグリセリド)が上昇し、HDLコレステロールが低下したのに対し、オリーブ油などの不飽和単価脂肪酸(MUFA)を多く含む、高脂肪低糖質のほうが良い結果を示したそうです。さらに後者では糖質が少ない分、食後血糖や血中インスリン値の低下も報告されているそうです。ただし、同じエネルギー量なので体重減少に差はないとのことです。
しかし実際には長期間の自由摂食のもとでは高糖質低脂肪が体重減少をもたらし、前述のように、体重減少に伴って中性脂肪(トリグリセリド)、HDLコレステロール、インスリン感受性の悪化は観察されなくなるというものです。
この結果から、長期の減量維持には低脂肪食が優れているようです。この理由として、エネルギー密度(kcal/g)という食欲の満足度に関連する因子があることがわかってきました。エネルギー密度が高いものはかさの割りにエネルギーが高いもの、つまり油です。逆に低いものは野菜や、パスタなどが挙げられます。腹持ち具合を考えた場合、エネルギー密度が高いほうが胃から排出される速度は低下しますが、速度は密度の上昇に伴って低下しないため、一定時間に排出されるエネルギー量は密度の低いものよりも高いものが大きくなります。よって密度が高いものは満腹感を得にくく、結果として多くのエネルギーを摂取してしまいます。
このエネルギー密度は主に脂肪と水の含有量で規定されます。ただし、食品に含まれない後から飲んだ水は効果がないことが示されています。
このほか、可溶性の食物繊維は胃からの食物の排出時間を延長し、野菜・果物は脂肪の含有量が少なく水分を多く含むので密度が低いことや、砂糖入り飲料などの液体は短時間で摂取され満腹感を得にくいなどがいわれています。
2006/10/18 ACSM CECセミナー勝川史憲先生『スポーツ医学における食事療法のEBM』より抜粋
